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「週刊正論」

参院選議席予測 自民勝利57±3

第25回参院選が公示されました。メルマガ「週刊正論」では、長年国政選挙に携わってきた複数の「ベテラン選挙アナリスト」への取材を通じて、各党の参院選獲得議席を予測してみました。月刊「正論」では平成31年2月号で、「日本一早い 参院選徹底予測」を掲載し、自民党の予測議席を55としましたが、堅調な支持率を踏まえ比例代表議席を16から18に上方修正し「57±3」とします。3年前の参院選で自民党の獲得議席は56議席でした。定数3増となったため、いまのところはほぼ前回並みといえるでしょう。

◇2月号のときと傾向変わらず

各党の獲得予想議席は以下の通りです。カッコ内は2月号での予測です。
自民57(55)▽公明13(13)▽立憲23(21)▽国民4(9)▽共産9(10)▽維新10(4)▽社民1(1)▽野党系無所属7(10)▽諸派0(1)

今回の参院選は定数が増えたことに伴い124議席が争われます。2月号発売時点では野党統一候補が出そろっていませんでしたが、野党系として調査しました。見比べてみると、それほど大きな変化はありません。

安倍晋三首相は非改選を合わせ、過半数を確保できる与党53議席を勝敗ラインとして設定しますが、公明党が13議席を獲得できる見込みのため、改選67議席を40議席まで減らしても到達できます。与党内には改選議席の過半数である63を挙げる幹部もいます。自民党は50議席以上獲得できる見通しなので、これも難しくはない数字です。ただ、首相が目指す憲法改正に必要な3分の2を維持するためには改憲勢力で86議席が必要で、ハードルは高いです。自民、公明両党に日本維新の会を足しても80で届きません。

予測で変更したのは国民民主党と日本維新の会の議席です。2月号では国民を9としましたが、4に変更しました。同党の支持率は低迷し、離党者も相次いでいることから選挙区、比例代表ともに苦戦を強いられることは必至です。維新は年初の時点では低迷していましたが、4月の大阪府知事・大阪市長のダブル選や衆院大阪12区補選などを制し、息を吹き返しました。国民の代わりに10議席をとるとみました。

◇焦点の1人区

参院選の勝敗を分けるのは、全国に32ある改選数1の「1人区」です。2月号では自民26、野党系6としました。この傾向に変わりはありませんが、大きな変化が起きたのが秋田選挙区です。3年前の参院選で、東北地方で自民党は1勝5敗と負け越しましたが、唯一勝ったのが秋田でした。いつもは強いはずの秋田で情勢の変化をもたらしたのが、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の秋田配備計画をめぐる、防衛省の相次ぐ不手際です。防衛省の調査に誤りがあっただけでなく、秋田市で開いた住民説明会で職員が居眠りしていたことも発覚し、県民の間に不信感が高まりました。こうしたこともあり、自民優勢だったのが大接戦となっています。山形選挙区も自民党候補がやや優勢としていましたが、野党統一候補に追い上げられています。

前回自民党が負けた青森選挙区、安倍首相が遊説第一声を行った福島選挙区では自民候補がやや優勢となっています。これが3年前との違いで、自民党では東北で複数議席獲れるのではないかと期待しています。ただ、いずれも接戦となっています。

2月号と変わりなかったのは新潟選挙区でした。2月号の時点では、国土交通副大臣だった自民党の塚田一郎氏の「忖度」発言は出ておらず、野党統一候補も決まっていませんでしたが、塚田氏の劣勢と判断していました。3年前の参院選でも野党系候補が自民候補に競り勝ったためです。長野選挙区でも野党候補の優勢と判定しましたが、情勢に変化はいまのところありません。

滋賀選挙区でも2月号時点の状況から変化が起きています。2月号の時点では野党統一候補は未定でしたが、元知事の嘉田由紀子氏が出馬し、野党共闘態勢が整いました。嘉田氏は元知事の知名度を生かし、やや優勢となっています。再選を目指す自民党の二之湯武史氏は従来の支持層以外への浸透を図っています。

◇複数区では野党対決

与党対野党の対決に注目が集まりますが、複数区では野党間の激しい争いも展開されています。なかでも静岡選挙区は平成13年以降、自民党と旧民主党(旧民進党)が議席を分け合ってきましたが、旧民進党分裂後初となる今回の参院選では、自民党の牧野京夫氏と国民民主党参院幹事長の榛葉賀津也氏が議席を分け合うとみられていたところ、立憲民主党は徳川宗家19代目の徳川家広氏を擁立しました。榛葉氏と立民幹事長の福山哲郎氏の確執も野党対決の背景にあると言われています。

静岡では殴り込みをかけた形の立民ですが、福山氏の地元、京都選挙区では共産党候補に追い上げられています。立民は2人を擁立した東京や、激戦区の大阪、兵庫でも苦戦を強いられています。これらの選挙区で敗北すれば、ダメージは小さくありません。

◇憲法改正論議に注目

選挙戦は始まったばかりであり、失言などで情勢に変化が起きる可能性もあります。いまでも鮮明に覚えているのは平成10年の参院選です。自民党が60議席前後を確保するとの予測が外れ、44議席と敗北しました。景気の不振や当時の橋本龍太郎首相の恒久減税をめぐる発言のぶれが原因でした。橋本氏は敗北を受けて直ちに退陣表明しました。

いまのところ与党は堅調さを維持していますが、野党が95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要と試算した金融庁金融審議会報告書をめぐる「2000万円問題」などで与党を追及し、議席を伸ばすこともありえます。

正論」では特に憲法改正に注目しています。3年前、与党など改憲勢力が3分の2以上を確保し、改憲に向けて“千載一遇”の好機を迎えましたが、残念ながら改憲論議は進みませんでした。今回、改憲勢力が憲法改正の国会発議に必要な議席数を失ったら、今後の憲法改正をめぐる議論に影響が出ることは必至です。

与党側は同日選を行わなかったため、衆院では3分の2を確保しています。参院で3分の2に足りなくなった場合には、維新だけでなく比較的憲法改正に前向きな国民民主党の非改選議員14人に対する説得作業も必要となります。もちろん、国民民主は野党連携を行っているので、選挙が終わったらすぐに与党と連携してくれると考えるのは非現実的です。2月号にも書きましたが、憲法改正を確実なものとするには、自民党、公明党、日本維新の会がいかに現有勢力を保持、あるいは議席を伸ばすかにかかっています。週刊正論は特に憲法改正について各党、各候補がどのような主張を展開するかを中心に据えながら、選挙戦をみていきたいと思います。

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著者略歴

  1. 有元隆志

    ありもと・たかし 産経新聞社正論調査室長兼月刊「正論」発行人。1989年産経新聞社入社。政治部で首相官邸、自民党、外務省などを担当。2005年7月からワシントン特派員。13年10月政治部長、16年10月編集局総務、18年7月から現職

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