THE 正論,  the seiron, THE SEIRON, THE正論

日本を正す!

MENU

「週刊正論」

雑誌「正論」の編集長が代わりました

4月末からの連休中に、安倍晋三首相の大叔父にあたる佐藤栄作元首相の生涯を描いた服部龍二著『佐藤栄作』を読みました。佐藤の二男の故佐藤信二元通産相の事務所には生前、しばしば通い、信二氏から父親の思い出話を聞いていたので、興味深く読みました

この本の中で、佐藤がニクソン米大統領との間で歴史的な沖縄返還で合意した翌日の昭和44(1969)年11月20日夜、下田武三駐米大使主催のレセプションに出席した式の最中、随行していた竹下登に対し、休息するので2階に来るようにと声をかけたときの場面が出ています。

「佐藤は椅子に腰を下ろすと、『竹下君、保利官房長官に連絡してくれ。帰国したら国会を開いて解散だ』と指示したという」
竹下は後にこのときの感想をこう振り返っている。
 「日頃あれほど律義で慎重な首相が示された指導者としての(解散総選挙という)決断を目の当たりにして、私は内心驚くと同時に『これが政治というものか』と、一瞬身の引き締まる緊張に包まれたことを、いまも鮮明に記憶している」

この選挙で自民党は追加公認を含めると300議席を獲得し圧勝し、佐藤は自民党総裁4選を果たしました。

時代は下って、竹下は昭和62(1987)年11月に首相の座に就きました。根回しの竹下らしく、総主流派内閣として政権基盤は盤石と言われたものです。竹下周辺には参院選とあわせ衆院選の同日選を実施しようとの構想もありましたが、リクルート事件が起き、総選挙に踏み切ることもできないまま、総辞職に追い込まれました。

佐藤、竹下両元首相の例からもわかるように、首相は自ら主導権を握って解散できるかが長期政権になるかの分かれ目です。同じく長期政権だった中曽根康弘元首相も昭和61年の「死んだふり解散」で戦後2度目となる衆参同日選を行い、自民党を圧勝に導きました

今夏の参院選にあわせ、安倍晋三首相が衆参同日選に踏み切るのではないかと永田町では騒がしくなっています。衆院で憲法改正発議に必要な3分の2を持っているのだから、危険にさらす必要はないとの慎重論も自民党内にはありますが、これまで6年間で2回総選挙をやっている安倍首相のことなので、チャンスとみたら同日選を行うだろうとの見方も根強いです。

こうした見方について、当の安倍首相は常套句として「頭の片隅にもない」と述べています。もっとも、自民党の閣僚経験者は「片隅にではなく頭のど真ん中にあるのだろう」と言います。いまのところは来年秋の衆院選というのが常識的な見方ですが、佐藤の例にみられるように、安倍首相が勝負に打って出る可能性はあります。

「内閣改造をするほど総理の権力は下がり、解散をするほど上がる」というのは佐藤が残した名言と言われています。安倍首相も解散を断行し、衆院選に勝利することで求心力を高めました。佐藤は同じく「参院を制する者は政界を制する」とも言っています。第1次政権の参院選で大敗し、総辞職せざるをえなかった安倍首相はこのことも身にしみて経験しています。安倍首相の言動に注目していきたいと思います。

ところで、令和の時代に入り、正論調査室でも人事異動がありました。これまでの編集長菅原慎太郎が編集局社会部編集委員となり、後任に正論調査室次長だった田北真樹子が就きました。正論では女性初の編集長です。

田北とは政治部で小泉純一郎政権のとき、ともに官邸クラブで取材をしました。私が官邸キャップで、政治部編集委員の阿比留瑠比がサブキャップ、3月まで政治部長だった石橋文登が安倍晋三官房副長官番、田北が総理番というような布陣でした。

その後、田北とは長期連載企画「歴史戦」でも取材班を組みました。田北は慰安婦問題で米サンフランシスコやジュネーブに行き、中国や韓国がこの問題をいかに拡散させようとしているかの実態をみてきました。徴用工問題では民間団体の強制動員ネットワークの集会の取材にも行くなど、記者の基本である「足で稼いで情報を集める」という姿勢を貫いてきました。雑誌「正論」でもともに「歴史戦」を続けたいと思っています。
田北の後任の次長には札幌支局長だった杉浦美香が就きました。ほかにもDTP担当の池田智子、販売担当の佐々木潤枝、事業担当の河西沙英子と正論調査室11人中5人を女性が占めています。創刊46周年の伝統に加えて、田北をはじめ彼女たちの感性を生かしながら、誌面をつくっていきたいと思っています。

タグ

バックナンバー

著者略歴

  1. 有元隆志

    ありもと・たかし 産経新聞社正論調査室長兼月刊「正論」発行人。1989年産経新聞社入社。政治部で首相官邸、自民党、外務省などを担当。2005年7月からワシントン特派員。13年10月政治部長、16年10月編集局総務、18年7月から現職

閉じる