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「週刊正論」

「拉致は戦争だ」 5月19日の「全拉致被害者の即時一括帰国を実現せよ!拉致国民大集会」

北朝鮮による拉致被害者家族会や「救う会」が5月19日に東京都内で国民大集会を開きました。集会では、政府に提出後、保管されていた1341万筆を超す署名が初公開されました。横田めぐみさん(54)=拉致当時(13)=の母、早紀江さん(83)は署名が詰まった箱の山を前に、「救出を願うお一人おひとりの魂を感じ、感謝するばかりです」と語りました。集会の模様は20日付産経新聞朝刊に掲載されていますが、ここでは「正論でおなじみの西岡力「救う会」会長(モラロジー研究所教授・麗澤大学客員教授)と荒木和博特定失踪者問題調査会代表の発言を紹介したいと思います。

◇西岡力氏の発言要旨◇

署名を見て胸が詰まる思いだ。これをポケットに入れて(金正恩朝鮮労働党委員長と)最後の談判をしてほしいと、さきほど昼食会で安倍晋三首相には申し上げた。

いま、大きな機会がやってきた。制裁と国際連携の後押しで、北朝鮮を交渉の場に引き出す、ということを繰り返し申し上げてきた。22年間、そのような運動方針で戦ってきた。金正恩氏は話し合いの場に出てきた。私たちは間違っていなかった。

制裁をみると、北朝鮮は外貨が本当に不足している。北朝鮮の輸出は制裁前28億ドルだった。いまは2億ドルだ。26億ドルの外貨が1年ごとに失われている。その結果何が起きているか。「39号室」という党の機関がある。そこに外貨が貯められ、核・ミサイル開発をしたり、「保衛部」という秘密警察を食べさせたり、軍や政府の幹部たちに贈り物をしたり、独裁を維持してきた。その「39号室」の資金がだいたい40~50億ドルと言われてきたが、いま10億ドルを切っているという、複数の専門家の分析が出ている。

軍隊はどうなっているか。兵士たちが飢えている。親が(子供を)軍に入れると栄養失調になるから入れたくない。賄賂を使って何とか軍から逃れようとしている。昔は軍に入ると、労働党の党員になれる、出世の道だと言ってみんな軍に入ろうとした。いまは別だ。北朝鮮では春と秋、2回入営する。この春の入営で人が足りなくなった。何でもいいから定員を満たせという命令が出ている。しかし、そこへ入ったら栄養失調になる。栄養失調になる理由は、協同農場の生産力が落ちているからだ。それなのにその外貨を使って何をしているかというと、ミサイルを撃った。(北朝鮮は)困ってはいるが、制裁を緩めてはならない。

国際連携もうまくいっている。シンガポール、ハノイでトランプ米大統領が直接、金正恩氏に「安倍首相がこう言っているぞ」と言った。向こうはごまかそうとしたが、ごまかせなくなって、何か答えた。その内容を安倍首相にすべて伝えてある。それで安倍首相は「条件なしに話し合う、首脳会談をやる」と言った。ハノイでどんなやりとりがあったか聞いてから「条件なし」と言われた。それまでは拉致問題に資するためにという条件を付けている。いま、資するようになったと判断しているというだけの話で全くぶれてはいない。

拉致問題を解決するには、日米が連携するしかない。過去に2回チャンスがあった。クリントン米政権のとき、やはり北朝鮮は核問題で追い込まれた。(米国は)爆撃を準備していた。最終的に(1994年6月)カーター元大統領と金日成主席が会って譲歩した。そのとき何が起きたか。KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)という軽水炉の建設のために10億ドルを出してくれと言われたら、拉致問題が一切進展していないのに当時の村山富市政権は10億ドルを出すと約束し、実際に5億ドル出してしまった。拉致が動いていないのに、支援をしてしまった悪例がある。それは日米の連携がされてなかったからだ。

あるいは、ブッシュ政権の時だ。当時の外務省の幹部はテレビに出て、「成功した」と言っているようだが、(2002年に)小泉さん(純一郎首相)が平壌に行ったとき、(北朝鮮側から拉致被害者が)「死んだ」と言われたことを確認しないで家族に伝えたことに、わたしたちは大変怒った。それと同時に、平壌に小泉さんを連れて行くと言うことを米国にぎりぎりまで言っていなかった。米国はそのとき、北朝鮮が濃縮ウラニウムを作っているという、確実な証拠を持っていた。確実な証拠を持っていた米国を信じないで、金正日氏(総書記)がやっていないと言うことを信じて、平壌宣言をまとめたから米国が怒った。小泉さんの訪朝の後、1か月後に、ケリー米国務次官補が訪朝し、証拠を見せて、北朝鮮は認めた。濃縮ウラニウムで核爆弾を作っているところに国交正常化して大規模な経済支援をしようとしたのが、あえて言うが当時の田中均外務省アジア大洋州局長の外交のやり方だ。それに反対した安倍晋三副長官(当時)はそのことがわかっているから、まずは、米国と話をする。米国にわれわれの立場をわかってもらう。核もやめさせなければいけない。

日本は核だけではない。拉致が、それも全被害者が帰ってこない限り、制裁を緩めないし、支援もできない。国際社会も一緒になって、歩んでほしいと米国を説得した。その枠組みを作ることには成功した。トランプ大統領が、自分の大切な核問題の時間を割いて拉致問題を言ったということは、核が動いても、拉致が動かなければ、米国は圧力を下げないというメッセージになっている。

国際連携と制裁の圧力で、取引に彼らを引き出すところまできた。ここまではきたということをまず、私たちは確認したい。しかし、これからが最後の勝負だ。では、「解決」の定義は何か。金正恩氏に会うとき私たちは何を解決というのか。繰り返し申し上げているが、全被害者の即時一括帰国だ。譲れない。では全被害者はだれがということだ。これが核心だ。3つのカテゴリーがある。

1つは2002年に北朝鮮が一方的に死んだと言った8人だ。誰にも死亡の証拠はない。たとえば、田口(八重子)さんと松木(薫)さんは交通事故で「死亡」と言われているが(北朝鮮の)警察が作った証拠には、名前のところがホワイトで消してある。名前をホワイトで消した書類で死亡など証明できないではないか。死亡診断書も偽物だった。横田めぐみさんでは、もっともっとうそをいっぱいついている。元夫が横田さんご両親に送ってきた手紙では93年に「突然、愛するめぐみを失った」と書いてある、死亡診断書にも93年に亡くなったと書いてある。しかし、帰ってきた人たちは94年までめぐみさんたちと一緒の地域で暮らしていたと証言している。夫はうそをついている。

2つ目のカテゴリーは、拉致を認めていない人。日本政府は17人認定しているが北朝鮮は13人しか拉致をしていないと言っている。5人帰した、8人は死んだ、だから解決したと。それはうそだ。日本政府は17人いるといい、北朝鮮の認めた13人とでは4人違う。そのうちの1人の曽我ミヨシさん、北は拉致していないと言う。しかし(娘の)曽我ひとみさんは近所のお店に夕飯のお買い物に言ってお母さんのミヨシと一緒に歩いていたら3人の男と1人の女工作員に襲われたと言っている。北朝鮮は何と言っているか。ひとみさんを拉致したのは下請け業者だ。ミヨシさんのことは知らないと。しかし、曽我(ひとみ)さんに聞くと、隠れ家で引き渡されたのではなく、そのまま船に乗せられて、連れて行かれたと言っている。その3人と1人と一緒に行ったと。そのうち女はひとみさんの教育係になったと言っている。下請け業者が入る余地がないではないか。一緒に襲った以上、北朝鮮はミヨシさんのことを説明する義務がある。他にも確実な証拠があるのが4人だ。

3つめのカテゴリーが、まだ未認定の人たちだ。日本政府は認定の有無にかかわらず、全員を助けると言っている。政府主催の国際シンポジウムでは、認定のない方々もいつも呼んで、国際社会にアピールしている。今回ニューヨークのシンポでも吉見美保さんが訴えを行った。認定以外にも絶対いる。(昭和38年5月に石川県志賀町から出漁し消息を絶った寺越昭二氏らの)寺越事件も認定されていないが、われわれは間違いないと思っている。もっといるのは間違いない。残念ながら、わたしたちは正確な名簿を持っていない。しかし、(北朝鮮は)持っているでしょう、と金正恩委員長に迫ってほしい。
制裁を緩めてほしかったり、支援がほしかったりするなら、1人でも残してはダメだ。この3つのカテゴリーの全員を(北朝鮮は)知っているはずだ。その全員が帰ってくるまでは、日本は制裁を緩めないし、支援もしないし、国際社会も一緒に歩いて行く。

8人死亡と言ったときに、なんで生きている人を死亡と言ったのか。たくさんの秘密を知っている、こういうことを恐れているのかもしれない。全被害者、それも3つのカテゴリーの全員が帰ってこなければいけない。1人でも、日本人が残っていれば解決ではない。そのことをみんなで確認して、何人だけだとか、それ以外に連絡事務所を作って再調査をするとか、いろんなことを言う人がいる。テレビでもそんなことを言っている元外交官がいる。そんなのはだめだ。全被害者の即時一括帰国だ。

制裁を緩めてはならない。一部緩めるとか、呼び水として、支援するとかそういうことは一切やってはならない。圧力を背景にした談判以外にない。いま圧力をかつてないくらい高めることに成功している。その大きな原動力はそこにある署名だ。圧力をかけてください、経済制裁をしてくださいと署名をもらったのだ。ここまできた。だからこそ、砂から手がこぼれるように何人かを残してはならない。全被害者、3つのカテゴリーの全員、一緒に帰ってこなければならない。そのために不退転で全力、みんなで叫び続けようではないか。

◇荒木和博氏の発言要旨◇

私は今、酒は一滴も入っておりません。しらふであると言うことを前提に申し上げますが、拉致は戦争です。

北朝鮮から日本に対して仕掛けられた戦争であります。いま、この場で金正恩に言わせてもらおうとすれば、家族会・救う会のメッセージで拉致被害者の即時全員一括帰国が実現すれば国交正常化に反対しないとか帰ってきた人たちから聞き出そうとしないとか、あるいは首相が無条件で、金正恩に会うと言っていると言うことは、これは、いつまでも続くことではないということです。こんなにありがたいことはないと金正恩は思うべきだと言うことであります

北朝鮮で殺された人、あるいは自然死であっても殺されたのと同じようなもんです。そういう方々も相当いるであろう。これをいったいどういう風に考えるのか。単なる話し合いで、仲良く、ニコニコと握手として笑って帰ってくるような、問題ではない。相手はそんなことではなくて、自分たちは戦争しているつもりで、日本人をかっさらっていったわけですから。この人たちを取り返すためには、こちらも戦争であるという覚悟をしなければいけない。

これは別に弾を打つということだけではなくて。それも入っているとは思いますけれども。それだけではなくて、外交であろうが、水面下の交渉であろうが、わたしたちが飛ばしていく北朝鮮への電波(拉致被害者に向けて発信する民間ラジオ『しおかぜ』)もそうですが、すべてが弾丸であり、ミサイルであり、爆弾であるということなのです。自分たちが命を失う覚悟を持ってでも取り返そうとしなければ、私は全ての拉致被害者を取り返すと言うことはできないだろうと思います。

日本はいざとなればいくらでもできる国であろうと思います。この問題は、北朝鮮が日本に仕掛けた戦争であって、米国は関係ありません。われわれが戦って取り返すしか方法はないというふうに思っております。

北朝鮮のなかで、膨大な人たちが、日本人の拉致被害者もそうですし、それから在日朝鮮人の帰国者、日本人家族もそうですし、そしてまた、いま北朝鮮に住んでいるごく普通の、二千数百万の大部分が被害者である人たちが、まさに死んでいっているわけです。その人たちのことを考えたら、敢えて言えば復讐をしないわけにいかない。

去年まで、15年間一応、小銃の射撃の訓練をしてまいりました。必要であれば、そういうことも含めて、とにかく、いま、こうやって救う会、家族会のメッセージがあり、首相が何の条件も付けずに会うと言っている、こんな時を逃したならば、二度とこのようなチャンスは来ないということを北朝鮮につながっている方は、ぜひとも、お伝えいただきたいということを、お願いを申し上げまして私の挨拶を終わります。

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著者略歴

  1. 有元隆志

    ありもと・たかし 産経新聞社正論調査室長兼月刊「正論」発行人。1989年産経新聞社入社。政治部で首相官邸、自民党、外務省などを担当。2005年7月からワシントン特派員。13年10月政治部長、16年10月編集局総務、18年7月から現職

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