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「週刊正論」

映画「主戦場」、”出演者”が猛抗議

月刊「正論」6月号でケント・ギルバート氏と不肖・私が酷評した映画「主戦場」が、ヘンな形で脚光を浴びている。慰安婦問題を扱ったこの作品に不本意ながら「出演」することになり「歴史修正主義者」などとレッテルを貼られた論客らが、映画の上映差し止めを求めて記者会見したのだ。制作当時「上智大学大学院生」だった映画監督が犯した〝違法行為〟とは―。

5月30日、東京都内で開かれた記者会見に現われたのは、「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝副会長、「なでしこアクション」の山本優美子代表、「テキサス親父日本事務局」の藤木俊一事務局長の3氏。このほか、抗議声明文には加瀬英明、ケント・ギルバート、櫻井よしこ、トニー・マラーノ(テキサス親父)の各氏が名を連ねている。いずれも映画「主戦場」に心ならずも「出演」することになってしまった人たちだ。

◇「卒業制作」だったはずが…

日系アメリカ人のミキ・デザキ(出崎幹根)監督は上智大学大学院生だった2016年から17年初めにかけて、先述した7氏に杉田水脈氏を加えた8氏に接触。デザキ氏は慰安婦問題に関するインタビューの目的を「卒業制作」として「大学に提出する」などと8氏に説明したため、各氏とも出演料を受け取らず取材に応じたという。

撮影にあたってはデザキ氏と8氏との間に「合意書」が結ばれた。なお、藤木氏はデザキ氏が示した文面は「取材者側の権利のみをうたう偏った内容だ」と判断して「甲(デザキ氏)は、本映画公開前に乙(藤木氏)に確認を求め、乙は、速やかに確認する」といった項目を追加した上でサイン。藤岡氏も、藤木氏のものと同じ追加項目のある合意書にサインしている。

しかし、デザキ氏は取材から2年ほど後に突然、インタビュー内容を映画にまとめ、釜山国際映画祭に出品することを藤木氏らに通告。合意書の通り内容の確認を求めた藤木氏に対し、デザキ氏は「残念ながら、リークの恐れと著作権の関係で見せられない」と突っぱねた。藤木氏側は「これは合意書で契約された債務の不履行に当たることは明白」と訴える。

一方で、藤木氏によると、デザキ氏は映画の中で、テキサス親父こと、トニー・マラーノ氏が投稿したユーチューブ動画2本を無断使用しているという。これは著作権の侵害にあたるのではないか。また各氏は、劇場公開映画に「出演」させられ、肖像権が侵害されたとして、映画のプログラムやポスターなどの宣伝物から自身の名前や顔写真をすべて削除することを求めている。

◇上智大学提訴も

本誌6月号で既報の通り、藤岡氏、藤木氏ら5氏は映画中で写真を並べられ、そこには「REVISIONIST(歴史修正主義者)」と巨大な字幕が付されている。これまた既報の通り、「歴史修正主義者」とは《元々、ナチス・ドイツによるホロコーストはなかったという主張をする人たちに向けられる否定的な言葉》に他ならない。デザキ氏は当初、「大学院生として、私には、インタビューさせて頂く方々を、尊敬と公平さをもって紹介する倫理的義務があります」などと出演者にメールを送っていた。あのレッテル貼りのどこに、「出演者」への尊敬や公平さがあるのだろうか。

藤岡氏らは「今回の事例は、大学の名を利用した詐欺行為とも言えるもので、このような違法行為の根拠地を提供する結果となった上智大学の責任も免れない」と判断。今後、映画の上映差し止めなどを求める法的措置をとる方針だが、デザキ氏、配給会社(合同会社「東風」)に加え、場合によっては上智大学をも被告として訴える構えだ。

◇デザキ氏側は反論

こうした中、デザキ氏側も6月3日に東京都内の弁護士会館で記者会見を開き、藤岡氏らの主張にほぼすべての点で反論した。

まず、「合意書」については「一言も『卒業制作』とは書かれていない」と述べ、「上映差し止め」には応じられないと主張した。また、トニー・マラーノ氏の動画利用については「引用」にあたり「法的に問題はない」などと述べ、「出演者」側の主張を一蹴した。

会見では「お騒がせして申し訳ない」の一言もなかった。あえて繰り返すが、取材に応じた方々への「尊敬と公平さ」は、どこにも感じられなかった。

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  1. 溝上健良

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