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「週刊正論」

一万円札が聖徳太子と福沢諭吉だった意味とは

先日、政治評論家の屋山太郎さんと、朝鮮半島情勢について話したとき、東京大学名誉教授の平川祐弘(すけひろ)氏が産経新聞「正論」欄に執筆した「明治維新のアジア史的『意味』」(2018年3月6日付)を読むことを勧められました。

「外国でお札には大統領や皇帝の肖像が選ばれるが、日本で最高額紙幣に登場するのは、昔は聖徳太子で今は福沢諭吉の一万円札である。この選定は興味深い。二人は日本が進むべき文明史的方向を示した人物であった」と、平川氏は記します。

聖徳太子について平川氏は次の点を強調します。

「東アジアの知識層は四書五経を尊び、堯舜が徳で天下を治めた古代中国を文明の範とした。そんな儒教を学んだ日本は中国中心の華夷秩序に収まるかに見えた。しかし政治的には『日出る国』の日本は独立で、中国と宗属関係にあった半島地域とは違った」

聖徳太子は「日出づる処(ところ)の天子、書を日没する処の天子に致す」との文言で知られるように自立外交を展開し、華夷秩序に組み込まれることなく、独立した国家として日本が発展した理念を示したというわけです。

平川氏は、福沢諭吉についてはこう説明しました。

「漢文も達者だが、維新前に三回西洋に渡航し、オランダ語も英語も解した。漢籍でなく英書により近代文明を学ぶ必要を説き、和漢の学者を『その功能は飯を喰う字引に異ならず』と揶揄(やゆ)した。福沢の『学問のすゝめ』はなんと350万部売れた。戦後、左翼は福沢が『脱亜入欧』を主張したと難ずるが、日本人が語学的に『脱漢入英』したのはまぎれもない歴史的事実だ。今後私たちが『脱英入漢』へ逆戻りするとすれば―そうなるとは思わないが―日本が中華人民帝国の属国となるときだろう」

福沢は朝鮮民族による近代国家建設のため金玉均ら開化派を支援しました。金は日本の明治維新をモデルに韓国の近代化を図ろうとしてクーデターを起こしましたが失敗し、最後は上海で暗殺されました。福沢は度重なる失敗に絶望し、アジアの「悪友」と縁を切るべしとして「脱亜論」を提唱したのでした。

屋山氏も「正論」(2013年4月8日付)で、「われわれ日本人が学ばなければならないのは、聖徳太子が実践した中華圏への対等外交の教えか、福沢諭吉の脱亜論だ。民主党に政権政党として欠けていたのは歴史観と国家観である」を強調しました。

聖徳太子について文部科学省は2017年の小中学校の新学習指導要領で、聖徳太子の名前を「厩戸王(うまやどのおう)に変える案を出しました。異論が出され復活されましたが、背景には「反日歴史教育」があるのではないかと言われています。

2002年に福沢を引き続き1万円として「起用」したときの塩川正十郎財務相は「相当なじんでいるし、枚数も多い」と説明しました。その当時、塩川氏らが今日の北東アジア情勢を見越していたかはわかりませんが、日本の「自立」が求められる今こそ、聖徳太子と福沢諭吉の先見性を認識すべきでしょう。

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著者略歴

  1. 有元隆志

    ありもと・たかし 産経新聞社正論調査室長兼月刊「正論」発行人。1989年産経新聞社入社。政治部で首相官邸、自民党、外務省などを担当。2005年7月からワシントン特派員。13年10月政治部長、16年10月編集局総務、18年7月から現職

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