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島田洋一の「世界 high & low」

島田洋一氏 韓国の「司法テロ」に対応準備を(全文公開)

7 月 24 日から 27 日まで、歴史認識問題研究会(西岡力会長)訪韓団の一員として、ソウル、釜山などで調査活動をし、現地要人と意見交換を行った。以下、「週刊正論」の特質を活かして、写真付き、実名入りで踏み込んだ速報を試みたい。

まとまった報告書は、近々歴認研から出す予定である。

今年は韓国も酷暑で、日中は 40 度近くにも昇る中、大韓民国歴史博物館、慰安婦像(日本大使館前)、徴用工像(龍山駅前)、ナヌムの家(慰安婦資料館)、戦争博物館、独立記念館(天安市)、慰安婦像(釜山日本総領事館前)、国立日帝強制動員歴史館などを精力的に回った。

日本を取り巻く歴史認識問題は様々にあるが、数か月内にも日韓関係を大きく毀損しかねないのが「徴用工問題」である。

第二次大戦中に日本本土の工場などに動員された韓国人徴用工やその家族が、これまで日本国や関係企業に対し賠償請求訴訟をいくつも起こしてきた。

しかし無責任な左翼の盧武鉉政権でさえ、 2007 年、日韓請求権協定を精査した結果、「日本政府に賠償は求められない」ことが分かったとして、独自に関係者に慰労金を支給し一件落着とした。

実際、個別の請求権確定を提案した日本側に対し、韓国側が、使途や配布先を特定しない経済協力資金の形を求めた経緯がある。

韓国の経済発展のためには、その判断は正解だったろう。ところが 2012 年 5 月、司法の場で問題が蒸し返される。

三菱重工や新日鉄に元徴用工らが賠償を求めた裁判で、韓国大法院(最高裁判所)が、「個人請求権は消えていない」として原告敗訴の判決を破棄、審理を高裁に差し戻した。

立法や行政の過程では実現できない無理筋の要求を、判決の形でもぎ取ろうという、左翼による一種の「司法テロ」であった。

当然その後、高裁では原告勝訴の判決が出され、大法院の最終決定が近々出る見込みである。

国立日帝強制動員歴史館(釜山)に「日帝強制動員現存企業」と題した興味深い液晶パネルがある。

数百の日本企業の名が約 10 社ずつ次々に画面に現れる。

その左の液晶パネルには慰安婦問題で「妄言」を吐いたとされる日本の政治家の顔写真がやはり次々に現れる。

暗く加工された安倍首相の顔も出てくる。

国立施設で、仮にも友好国の現職首相を露骨に貶める感覚は異様だが、習近平中国国家主席、トランプ米大統領に対して同じことは絶対にしないだろう。日本は明らかに舐められている。

日韓条約、請求権協定で徴用工問題は解決済みであることを示す資料は(韓国政府がそう認めているにも拘わらず)1点もない。

韓国側が、日韓の正式合意に反して賠償支払いを求め、日本企業の在韓資産差し押さえなどの措置に出てきた場合、日本政府は対抗差し押さえを含めた断固たる対応をせねばならない。

早急に具体的準備を進め、韓国政府にも内々に伝えて、抑止力とすべきだ。

ところで、上記2つのパネルから左に折れた壁面に「良心的日本人」のリストと彼らが徴用工への賠償支払いを求める横断幕を持つ写真が大きく印刷されている。

「強制動員真相究明ネットワーク」(共同代表飛田雄一、上杉聡、内海愛子)のメンバーらである。

日本のみならず韓国の企業家らも徴用工問題の蒸し返しを望んでいない。

上記歴史館を抱える釜山の市長も、「日帝の過ちは大きいが、現代史においては経済協力を行う隣国だ。外交問題が深刻化すると観光客が減り、市民と在日同胞が被害を受ける。 総合的に考慮せねばならない」との見解をメディアに示している。

今年 5 月 31 日には、釜山の日本総領事館背面の歩道上に左翼労組が主体となって置いた徴用工像を、地元自治体が、激しいもみ合いの末、強制撤去した。もっとも先に設置された慰安婦像の方はそのままとなっている。

現地で面談した道上尚史(みちがみひさし)総領事、中江新主席領事によれば、慰安婦像を建てた団体と徴用工像を立てた団体は当初折り合いが悪かったが、最近主導権争いに一定の折り合いを付けた様子だという。

今後大法院の判決が出た段階で、両団体が協力して再び公館前の像設置など反日運動を活発化させるかも知れない。

ソウルの龍山駅前にある徴用工像を観察したが、足を止める人とてない。やせ細った像は、説明文を入れ替え、そのまま北朝鮮の人権問題を糾弾する像とすべきだろう。そう思って見ると、よくできている。

韓国政府は「外交公館の保護に関した国際礼譲と慣行」から、大使館、領事館周辺における徴用工像の設置は不適切としている。

今後とも、その都度、設置を阻止するかも知れない(慰安婦像については“法治でなく放置”が変わらぬ方針だろう)。

ただし像より重要なのは、「司法の独立」を口実とした日本企業の在韓資産差し押さえといった行為である。

「司法判断には介入できないので、何とか日本側が和解金の支払いなどで対応してくれないか」と文在寅政権から日本政府に「相談」が来るかも知れない。

しかし裁判官の任命は政府と議会の責任であり、日本企業に被害を及ぼさぬよう韓国内部で処理するのが筋である。

政府は、個々の企業にも方針を周知徹底した上、韓国からの要求や「お願い」を撥ね付けねばならない。無限大の潜在的賠償案件を手に、中国も成り行きを注目している。

今回、慰安婦に関する資料を集めた「ナヌムの家」も訪れたが、日本発の資料が大半だった。

河野談話を報じる朝日新聞の写真はハイライトの一つである。

日本の左翼が煽り、政府が事なかれ的対応で悪化させた慰安婦問題の轍を、決して徴用工問題で踏んではならない。

(平成30年8月1日)

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