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山田吉彦の「海流真相」

山田吉彦氏 誰にでもわかる「中国海洋調査船の真実」

この数年、日本近海での中国船による海洋調査が頻繁に行われている。

7月14日から16日、中国の海洋調査船「科学」が、東シナ海の沖縄本島西側の伊是名沖、伊平屋沖海域に姿を現し、日本政府に断りなく、海中にワイヤーを伸ばしているのが確認された。

日本の「海の日」を挑発するかのような所業である。

ROV(遠隔操作型無人潜水機)を投入し、海底状況の調査を行うとともに、海底資源のサンプルを取得していたようだ。

この海域は、沖縄トラフという水深1000メートルほど沈降した海域で、稀少金属を豊富に含んだ海底熱水鉱床が存在していることが知られている。

海底熱水鉱床とは、海底下のマグマから稀少金属が融け出し、海底まで涌出してきたものが海水により冷却され沈降してできた海底鉱山である。

6月28日にも同じ海域に「科学」が侵入し、3日間にわたり調査活動を行っていた。

この海域に中国調査船が頻繁に姿を現すようになったのは、2014年からである。

当時、海上保安庁および石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、この海域に世界的に見ても含有量の豊富な海底熱水鉱床が点在していることを報告している。

2015年から3年間で、沖縄県沖海域だけでも新たに6カ所の海底熱水鉱床の存在を確認した。

特に伊平屋・伊是名沖海域より若干、南にある久米島沖の海底に発見された海底熱水鉱床では、銅の含有率が極めて高く、当初、銅の平均含有率が13%と極めて高品位であることが発表されている。

陸上の銅鉱山では、含有率0.5%でも採掘していることから考えると極めて有望な鉱山である。

また、2017年には、同じ久米島周辺海域に約12平方キロメートル、東京ドーム255個分の広さに相当する広大な海底熱水鉱床が発見されている。

昨年、日本は世界で初めて、船で海底熱水鉱床から鉱物資源を大量採取することに成功した。

水深約1600メートルに存在する鉱床を粉砕し、海水とともにポンプで、船に吸い上げる方法である。

この海域には、日本の年間使用量に相当する亜鉛の存在が推定されている。

日本の海洋開発技術も中国にとっては、是が非でも手に入れたいものである。

そして、中国の海洋調査船は、日本の海洋調査の情報をいち早く入手し、自国船による調査を敢行しているのだ。

日本と中国の間には、東シナ海の日本の管轄海域で科学的な目的での海洋調査を行う場合には、調査海域、期間、目的、調査船の種類などを、外交ルートを通じ届け出ることになっているが、もはや形骸化されている。

中国の海洋研究者によると、既に伊平屋沖、伊是名沖海域の海底熱水鉱床のサンプルは取得しているようだ。

海底資源のサンプルを取ることは、科学的調査の範囲を逸脱する行為であり、日中両国の合意に違反するものである。

政府は、外交ルートを通し、中国の不法な海底調査の停止を求めているが、応じる気配すらない。

日本と中国との間の排他的経済水域および大陸棚の境界は、未だ確定していない。

日本は、国連海洋法条約の原則に基づき、日中の沿岸から同等の距離「中間線」をもって境界としているが、中国は沖縄トラフまでを自国の大陸棚が続く管轄海域であると主張して譲らないからだ。

かつては、中国の主張するような大陸棚延伸論と呼ばれる海底地殻の連続性を重視し管轄海域の境界画定を行うという風潮があったが、1994年に国連海洋法条約が発効して以降は、同条約の原則により、中間線をもって境界とすることが常識である。

しかし、中国は、南シナ海における九段線と同じように東シナ海においても独自の国際法を逸脱した見解による海域支配を目論んでいるのだ。

沖縄トラフは、日米の潜水艦が展開する安全保障上、極めて重要であり、中国の侵出を阻止しなければいけない海域である。

今後も中国は、計画的に日本の管轄海域内の海洋資源調査を継続するとともに、東シナ海の制海権を獲得するために不法な海洋調査を続ける恐れがある。

海上保安庁には徹底した中国海洋調査船の排除を求めるとともに、自衛艦が中国海洋調査船の周辺を走り回るなど、違法調査活動を阻止する動きも必要であろう。

沖縄トラフまでもが、中国の管轄海域であるという既成事実を作られると、日本の海底資源や水産資源が奪われ、さらに、国土すら脅かされることになるのだ。

潜水艦が展開される海域であり、海洋安全保障上、極めて重要である。

海底資源、安全保障の両面から、この海域での中国の海洋調査は断じて許すわけにはいかない。

(平成30年8月8日)

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