THE 正論,  the seiron, THE SEIRON, THE正論

日本を正す!

MENU

阿蒙列車

帰れない夏の日

新潟県柏崎市 JR青海川駅

 小川の先の鉄橋の下をのぞき込むと日本海が広
がり、きらきら光る海面がまぶしい。
 六年前の夏、海なし県の熊谷から「快速マリンブ
ルーくじらなみ号」という海水浴列車に乗り、上越
国境の長いトンネルを抜け日本海の海水浴場に来
た。「浮き輪も水着もないから、何もすることがあり
ませんね」。けだるい声の主はアルプス山系君だ。駅
前の海に注ぐ小川は谷根(たんね) 川といい、毎年十月中旬か
ら十二月下旬にかけて、二万尾近い白鮭が川底に身
をこすりながら遡上する。事件記者を生業としてい
る山系君に貴重な話題を提供したつもりだったが、
「こんな浅い小川を鮭が上るとは確かに事件です
ね」と相変わらず癪に障る。
 プラットホームから「日本一の日本海の夕日」を
眺めてみたいとも思ったが、事件記者と眺めても仕
方あるまい。また海水浴列車で来ようと思っている
うちに、四年前の夏を最後に運転されなくなってし
まった。

[文・写真] 大竹 直樹

タグ

バックナンバー

著者略歴

  1. 大竹直樹

    産経新聞社会部記者。本誌2019年6月号に「反天皇の裁判官、外圧でゴーン〝保釈〟…『法の番人』は本当に公正中立か」を掲載。

閉じる