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阿蒙列車

線路は続くよ、どこまでも

神奈川県川崎市 川崎区 神奈川臨海鉄道 千鳥町駅

 「時刻表に載らない駅があるのです。中に
は入れませんが、見に行きませんか」とアル
プス山系君が得意げに誘ってきたので、同伴
した。時刻表にないのは乗客のない貨物駅だ
からなのであるが、鉄道の駅なのにバスで行
くのだという。着いてみると、配管が入り組
んだ工場脇に線路が並んでいるだけでホー
ムもない。こんなものが駅かと思う。
 「いえ、歴とした駅です。中古電車がこの先
の港から東南アジアに送られる。いわば海外
への始発駅です」。山系君が言う。トラックの
行き交う隣の倉庫群に、線路がひょろひょろ
伸びて、海まで続いている。お役ご免となった
電車はこの上をディーゼル機関車に引かれ、
岸壁で船に載せられるのである。
 山系が「ドナドナドーナー」と歌い始めた。
売られる仔牛を見るような気分がしないこ
ともないが、故障がないメード・イン・ジャパ
ンの中古車両は海外で引く手数多で、日本語
表示を残したまま元気に走っているのだとい
う。「人間到る処青山あり。外国で人を運ぶ志
を遂げるのだ」。私が訓を垂れると、山系は変
な顔をした。

[文・写真] 大竹 直樹

 

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著者略歴

  1. 大竹直樹

    産経新聞社会部記者。本誌2019年6月号に「反天皇の裁判官、外圧でゴーン〝保釈〟…『法の番人』は本当に公正中立か」を掲載。

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