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【11時間の「たまねぎ男」会見が不発に終わった理由とは】


日本ではメディアに対する蔑称として「マスゴミ」という言葉があります。メディアの一員として不愉快な表現ですが、産経新聞の名村隆寛ソウル支局長によると、韓国でも「マスゴミ」に相当する言葉として「キレギ」という表現があるそうです。「キジャ(記者)」と「スレギ(ゴミ)」を掛け合わせた合成語といいます。

「キレギ」が韓国のネット上などで飛び交ったのが、文在寅大統領から法相に指名された曺国(チョグク)前大統領府民情首席秘書官の一連の疑惑に関する9月2日の「記者会見」でした。

曺氏については、娘が名門大学に不正入学したのではないかなどの疑惑が連日のように報じられています。疑惑が次々と出てくることから「タマネギ男」とも揶揄されています。

なぜ「記者会見」とカギカッコつきにしたかというと、とても会見とはいえないのが実態だったからです。月刊「正論」でおなじみの西岡力麗澤大学客員教授が4日に開かれた民間シンクタンク「国家基本問題研究所」(国基研、櫻井よしこ理事長)の月例研究会で、説明してくれました。

西岡氏によると、この「会見」は、韓国では「記者懇談会」と呼ばれ、その場にいたのは一連の疑惑を取材してきた社会部記者ではなく、国会担当、しかも与党担当の記者でした。与党主催で司会者も与党関係者だったといいます。

曺氏の疑惑を調べてきた記者ではなかったためか、「会見」での記者たちの追及もぬるく、名村氏によると、韓国内で「キレギ」という書き込みがネットで飛び交ったといいます。曺氏に携帯電話をみながら質問する記者もいれば、野党幹部にどのような質問をしたらいいか尋ねる書き込みをした記者もいたそうです。左派系のメディアなどは「法相になってからの抱負は」と質問したそうですから、とても追及する姿勢には見えなかったといいます。

この話を聞いて、平成4年8月27日、当時、自民党副総裁だった金丸信氏が記者会見し、東京佐川急便から5億円の闇献金を受け取ったとして副総裁辞任を表明したときのことを思い出しました。この会見に出ていたのも自民党担当の政治部記者で、追及が甘いと批判を浴びました。

金丸会見は短時間でしたが、曺氏の会見は2日午後3時半からはじまり、途中休憩をはさみながら翌3日午前2時過ぎまで続きました。お笑い芸人の「闇営業」問題をめぐり、吉本興業の岡本昭彦社長が7月22日に開いた記者会見は5時間でした。それでも長すぎると思いましたが、曺氏の会見はその倍以上でした。

ただ、長時間でも記者たちの「緩い」質問のせいか、曺氏は「質問者の顔が見えないからカメラのフラッシュをたくのはやめてくれ」、「虚偽事実で私の子供たちを不当に攻撃しないでほしい」と注文を付ける余裕もあり、そのよどみなく答える姿は、学生に対する教授のようだったと、名村氏は記事に書きました。韓国の野党やメディアは「見せかけの会見」(中央日報)などと批判しましたが、曺氏や文政権は自信を持ったようです。

新聞記者のなかには、特ダネを優先するあまり、記者会見を軽視する向きもあります。だがそれは違います。例えば政権のスポークスマンである官房長官の記者会見でしたら、政府の公式見解をただす重要な機会といえるでしょう。

日韓を問わず、「社会の木鐸」「第四の権力」と位置付けられてきたメディアの存在が大きく揺らいでいることは間違いありません。月刊「正論」では別冊「堕ちたメディア」で、これまで取り上げてきた「メディア問題」とともに、作家でジャーナリストの門田隆将氏による書き下ろし論文も含め、その病巣をあぶりだします。

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別冊正論35「堕ちたメディア」(本体926円+税)は9月17日(火)に発売します。
【お申し込み方法】
・ハガキ:〒100-8077 (住所不要)産経新聞社雑誌「正論」販売部別冊正論35係へ
・FAX:03-3241-4281
・電子メール:seironhanbai@sankei.co.jp
【問い合わせ先】
雑誌「正論」販売部 03-3243-8469(平日10時―18時)
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別冊正論35号をお手元にお送りする際、専用振込用紙を同封します。それでご入金ください。配送料は当社で負担させていただきます。

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著者略歴

  1. 有元隆志

    ありもと・たかし 産経新聞社正論調査室長兼月刊「正論」発行人。1989年産経新聞社入社。政治部で首相官邸、自民党、外務省などを担当。2005年7月からワシントン特派員。13年10月政治部長、16年10月編集局総務、18年7月から現職

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