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葛城奈海の「やおよろずの森から」

葛城奈海 「台風15号の被害に想う」  ※写真は陸上自衛隊提供

9月9日未明に千葉県に上陸した台風15号の被害が、ここまで広がることを予想していた人は少なかったのではないだろうか。家屋の損壊や産業へのダメージなどで今なお苦しんでおられる被災地のみなさまには、心からお見舞いを申し上げたい。

停電と断水が長引くにつれ、電気に過度に依存する現代日本人の生活が、インフラ途絶時にいかに脆弱か、改めて思い知らされた。自宅に井戸がありながら、その水を電力によって汲み上げていたため、停電と同時に断水になったという皮肉な例もある。災害時にもタフに生き抜くことができる「生き物力」を身に付けることを、日本人は改めて肝に銘ずるべきであろう。

これについては、また別の機会に記したいと思うが、今回、停電が長引いた大きな要因は、夥しい数の倒木であった。最大瞬間風速57.5m/sという強風が、鉄塔や電柱を薙ぎ倒し、さらには倒れた木々が架線に引っ掛かり、あるいは切断し、それを修復に向かおうとしても、道そのものも倒木によって塞がれているという悪循環が、電力復旧への大きな障壁となった。

災害派遣で現場に向かった自衛官たちが、チェンソーを手にこの倒木に立ち向かう姿に、危機感を覚えたのは私ばかりではないだろう。少しでも林業をかじったことのある人間なら、倒木、中でも「かかり木」と呼ばれる、倒れる途中でどこかに引っ掛かってしまった木を処理することがいかに危険か、知らないはずはないからだ。

林業は、労働災害率の高い職業だ。特に、伐倒時の事故が多い。一見、同じような木の集合体に見える杉や檜などの人工林であっても、一本一本の木が個性を持った命であるため、枝の付き方や重心、生えている場所の条件など、まったく同じということはない。ただでさえそうなのに、それが「かかり木」になった場合は、余計な圧力がかかっているため、一部を伐ることでバランスが崩れ、思いもかけない方向に落ちたり回転したり、ときには撥ねたり跳んだりすることがある。「かかり木処理」は、日常的に伐採を行っている林業家であっても、非常に危険な作業なのだ。

フェイスブックなどを通じて自衛隊が送ってくる現場映像を見るたびに、二次災害が出ないよう祈るような思いになった。と同時に強く思ったのは、これだけ甚大な自然災害が相次ぎ、自衛官が災害派遣される機会が増えている以上、殉職者を出す前に、トレーニングしておくべきだということだ。

「自衛隊は災害派遣隊ではない」という声もよく聞かれる。確かに、災害派遣の三要件、「公共性」「緊急性」「非代替性」を真摯に考慮すれば、今回の倒木処理でいうなら千葉県の主導で森林組合や林業事業体らに積極的に声がけし、まず林業関係者を動かすということもできたはずだ。そうしたことも今回の教訓として真剣に検討してもらいたいが、一方で「窮地に陥っている国民がいれば助ける」というのは自衛官の矜持でもあり、災害派遣とはいえ実任務にあたることは、他省庁や自治体、関連機関との連携を含め、「足らざるを知る」貴重な機会になることは間違いない。

以上を踏まえて、ひとつ具体的に提案したい…

写真は倒木を撤去する自衛官=千葉県成田市畑ヶ田町 (陸上自衛隊提供)

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