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【本当は恐ろしい「質問権の侵害」論】原英史(シンクタンク代表)

国民民主党の原口一博国対委員長、森ゆうこ参院議員らが、10月16日の記者会見以来、「質問権の侵害」を問題にしている。15日の参院予算委員会での森議員の質問が事前にネットで批判されたことが「質問を封じ込める」行為であり、「国会議員の発言の自由、憲法そのものに対する挑戦」「重大な民主主義に対する挑戦だ」という。
https://www.dpfp.or.jp/article/202073

もちろん、国会は内閣に対し質問する権能を有する。これは、議院内閣制の根幹だ。だが、原口議員らの唱える「質問権の侵害」論は、どうやらそんな話ではないようだ。その後の関係者らの発言もあわせみると、恐ろしい主張であることが明らかになってきた。

結論から先にいうと、原口議員らの主張は、こういうことだと思う
1.国会議員の質問は不可侵である。一般人は、国会議員の質問を批判してはならない
2.国会議員は、国会内では、一般人の人権侵害も自由にできる。人権侵害を受けた一般人が、国会議員に楯突くことは許されない
3.上記に反し、国会議員に楯突いた一般人は、刑事告発の対象になる

あまりにとんでもない主張なので、私の妄想かと思うかもしれないが、そんなことはない。それぞれ根拠がある。

1.国会議員の質問は不可侵である。一般人は、国会議員の質問を批判してはならない

原口議員らは繰り返し、質問前日の高橋洋一氏が出演したDHCテレビ「虎ノ門ニュース」での発言をやり玉にあげてきた。ネットが炎上し、批判が殺到すると、「怖くて質問できなくなる」。これが「質問権の侵害」と主張する。

この主張は、私にはよくわからない。批判を受けたら、本来すべき国会質問ができなくなるような人は、単に国会議員にふさわしくないだけではないかと思う。だが、ともかく原口議員らの主張では、質問への批判は「質問権の侵害」だという。

原口議員らは、批判が「質問前」だったことを殊更に強調する。しかし、「質問前」か「質問後」かは、論理的に意味がない。国会質問は、一回限りでなく、何回も繰り返されるからだ。原口氏らの主張に基づけば、「質問後」に批判することも、その後その問題を取り上げることの妨害になり、やはり許されざる「質問権の侵害」になるはずだ。

2.国会議員は、国会内では、一般人の人権侵害も自由にできる。人権侵害を受けた一般人が、国会議員に楯突くことは許されない

森議員の15日の国会質問では、私が「国家公務員だったらあっせん利得、収賄で刑罰を受ける(行為をした)」とのとんでもない発言があった。事実無根の名誉毀損、人権侵害だ。だが、国会議員の国会内での発言は「免責特権」の対象で、訴訟では難しい。そこで私は、国会内での懲罰を求める請願を行うべく、署名活動を行うことにした(森議員の人権侵害発言の経過は長くなるのでここでは省く。署名活動の文面を参照いただきたい。http://chng.it/k5rCD2jQKn)。

あろうことか、この署名活動に対し、「質問権の侵害」を根拠に、弾圧がなされている。柚木道義衆院議員による10月23日の衆議院内閣委員会での質問だ。

柚木議員は「どういう立場で意見するのか質疑するのかは当然質問権の自由ですから、気に入らなければ弾劾請求なんてやってたら、質問成り立ちませんよ」と発言。「とんでもない」「あり得ない」と繰り返し、北村誠吾内閣府特命担当大臣に対し、私の署名活動をやめさせるよう何度も迫った。

それこそ、「とんでもない」「あり得ない」議論だ。こんな主張がまかり通るなら、国会議員は「質問権の自由」と称して人権侵害をやりたい放題。それに抗する言論活動は、「質問権の侵害」として弾圧を受けることになる。こんな議論が国会の場でなされている。本当に「言論の自由の危機」「民主主義の危機」だ。

3.上記に反し、国会議員に楯突いた一般人は、刑事告発されることもある

そんな中でさらに出てきたのが、元参院議員の平野貞夫氏のツイートだ。平野氏は、小沢一郎衆院議員の側近として知られた人物。今も国民民主党に関わる役職を務めているようだ。

平野氏のツイッターの書き込みは以下の通り。
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https://twitter.com/hirano_sadao/status/1187535356624699392
「高橋洋一氏らの森ゆうこ議員への審議権妨害は、立法府の基本秩序を破壊する内乱罪と同質だ。参院は高橋氏ら関係者を刑法234条(威力業務妨害罪)で検察に告発すべきだ。安倍政権の国家戦略特区の利権構造も見えみえだ。同時にネット時代を踏まえて「発言通告」のルールを与野党で協議すべし。
午前10:04  2019年10月25日
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このツイートには心底驚いた。一般人が国会議員に楯突くと、刑事告発を受ける。「内乱罪と同質」とまでいう。ここは本当に日本なのか。民主国家なのか。こんな呼びかけが公然と、国民民主党関係者から国会議員たちになされている。私自身も刑事告発を受ける可能性がある。

あり得ない事態なので、日弁連の人権擁護委員会に人権救済申立を行うことを検討する。あらゆる手立てを講じ、憲法の根幹たる「言論の自由」を守らなければならない。

はら・えいじ 昭和41年生まれ。東京大学卒業、シカゴ大学大学院修了。経済産業省などを経て平成21年、「株式会社政策工房」設立。政府の国家戦略特区ワーキンググループ委員などを務める。元規制改革推進会議委員。

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