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【政治部記者が安易に使う「正念場」】

政治部記者時代、先輩記者から「『正念場』は使うな」と言われました。「正念場」という言葉は、原稿を締めくくるときなどに実に使いやすい言葉で、ついつい使ってしまうことがありました。「正念場を迎えています」と書くと、おさまりがいいような気になります。

最近の記事をみると、たまたま朝日新聞でこの「正念場」という文字を見つけました。
「安倍政権のおごりや弊害があらわな中、もう一つの選択肢として国民に認めてもらえるか、まさに正念場である」(17日付社説)
「(党幹部は)『いつも問われ続けているが、今はまさに正念場だ』と語る」(14日付政治面)

「まさに正念場」-何を指しているかわかりますか。社説は立憲民主党、政治面は自民党の岸田文雄政調会長についての記事です。

「正念場」とは、広辞苑によると「歌舞伎・浄瑠璃で、主人公がその役の性根(しょうね)を発揮させる最も重要な場面。性念場。性根場。転じて、ここぞという大事な場面・局面」という意味です。「正念」とは仏教用語で「仏を思い続けること。正しい思い」を言います。歌舞伎・浄瑠璃で使われるようになってからは、大事な場面という意味で使われています。

いま、政治部の現場を離れ、政治家の新型コロナウイルスへの対応を見ていると、立憲民主党にしろ、岸田氏にしろ、本当に「正念場」にあるという意識を持っているのかと思います。

立憲民主党はコロナウイルス感染拡大のなか開いた16日の党大会で、「すべての取り組みを政権交代のための準備につなげる」との活動方針を決定しました。17日の衆院予算委員会集中審議のテーマは「新型コロナウイルスへの今後の対応等内外の諸情勢」でした。安倍政権のコロナウイルス対応に対する批判の高まりを踏まえ、「政権交代のため」、政権批判と、それだけにとどまらず感染拡大に向けた前向きな話をするのかと思ったら、相変わらず、昨年来の「桜を見る会」に関する質問を続けました。安倍晋三首相を追及することで、イメージダウンを図ろうとしているのでしょうがとても、政権を狙おうという政党の姿勢にはみえません。

岸田氏は2日のNHK番組で「簡易検査キットを早期に開発し、ワクチン開発や治療法にもつなげなければいけない」と述べたほか、7日には官邸で安倍首相と会談し、発生地域が広がった場合の入国制限の対象拡大や、平成21年に国内で新型インフルエンザが流行した際、医療機関に設けられた「発熱外来」の設置などの提言を提出しました。策定に関わった木原誠二政調副会長は「党の提言のほとんどが政府の緊急対策に盛り込まれた」と自画自賛しました。

果たしてそうでしょうか。産経新聞の社説にあるように「これらの対応を急ぐべきだが、国内流行の兆しが表れる以前のもののようにみえる」といえます。岸田氏が存在感を発揮したと思っているとしたら、ずいぶん認識がずれています。

岸田氏にはまず、月刊「正論」3月号を読んでほしいです。岸田氏が「ポスト安倍」をねらうならば、中国の習近平国家主席の国賓としての訪日中止、あるいは延期を首相に直言するぐらいでないと誰も本気とは受け止めないでしょう。訪日中止を岸田氏が言い出したら、首相や二階俊博幹事長は不快に思うでしょうが、それくらいの気迫がほしいものです。政治部記者らもその時になってはじめて「正念場」という言葉を使ってほしいと思います。(正論調査室長 有元隆志)

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著者略歴

  1. 有元隆志

    ありもと・たかし 産経新聞社正論調査室長兼月刊「正論」発行人。1989年産経新聞社入社。政治部で首相官邸、自民党、外務省などを担当。2005年7月からワシントン特派員。13年10月政治部長、16年10月編集局総務、18年7月から現職

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