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【追悼 加戸守行前愛媛県知事】

 

コトが政治課題や行政課題になると粘り腰で取り組む不屈な方でした。文部省時代、教科書問題で味わった辛酸を愛媛県知事になってからも忘れることはなく、教科書を正常化させようと訴えた産経新聞の報道にも、深い理解に根差した公正な姿勢で常に接してくださいました。加戸氏の教育、教科書に対する姿勢は加戸県政のもとでその多くが実現しましたが、地元紙や左派などから心ない批判を浴びたり、裁判を使った陰湿な妨害が繰り返されることもしばしばでした。しかし、そうしたことにも加戸氏は決して右顧左眄することはありませんでした。教科書検定や採択の判断が「煽られた批判」に歪められることなどあってはならない。そう考えて微動だにすることなどなかったのです。

50年以上にもわたって新設ができなかった「岩盤規制」の象徴、獣医学部も「獣医学部の新設は愛媛県の悲願」と掲げ、飽くなき挑戦が続きました。獣医学部新設を求める特区申請は実に15連敗に及びましたが、ご本人はそれを「相撲なら力士引退ですね」と口にし、笑っていました。「いい加減諦めたらどうか」「どうせダメだよ」などと加戸氏の飽くなき戦いを評する人もたくさんいたはずですが、彼は決して戦いの旗を降ろすことはありませんでした。

現在、発売中の月刊「正論」4月号では加戸氏による教科書検定の持つ役割の大きさを世に問うた「〝近隣諸国条項〟削除よりも検定を機能させよ」が掲載されています。教科書誤報事件の際、どんなことが省内で繰り広げられたのか。そしてそれがのちに知事になった加戸氏に何をもたらしたのか、を振り返る回顧録です。

もっといろいろなお話をうかがいたかった。もっといろいろなお仕事がしたかった。それが偽らざる気持ちであり私の願いでもありましたが、これはかなわぬものとなり、4月号が〝遺稿〟になってしまいました。


どうか安らかにお休みください。そして今までありがとうございました。(安藤慶太)

 

                  ◇

≪以下、月刊「正論」4月号より抜粋≫

 

私は愛媛県知事(平成11年1月28日~22年11月30日)として育鵬社(当時は扶桑社)の歴史教科書には真剣に向き合いました。その理由はひとえに自分が文部省、それも初等中等教育局の地方課(現在の初中教育企画課)に在職した時の経験が大きいからだと考えています。私が文部省に在職中の昭和57年、教科書検定をめぐって「教科書誤報事件」が起こりました。教科書検定が批判に晒され、近隣諸国への必要な配慮を定めた「近隣諸国条項」が教科書検定基準に設けられるという出来事も忘れられません。ですが何よりもその後の私を方向づけたのは地方課にいたころの経験だった、といっていい。そのくらい地方課で過ごした日々は私にとって大きなものでした。

 

私の地方課勤務は入省4年目からの係員、係長、課長補佐、課長と役職ごとにありました。局長も加えると、とびとびですが、通算で14年間の長期にわたって地方課の仕事に携わったことになります。地方課は、全国の教育公務員制度と教育委員会制度を所管しますが、一般には日本教職員組合(日教組)対策のとりまとめ役として理解されています。

 

当時の日教組は、勤務評定や教員人事、主任制度、カリキュラムなど学校の細部に至るまで様々な反対闘争を手掛け、学校教育に大きな影響を与える存在でした。教科書にしても日教組の目に適った教科書でなければ、採用されることはまず期待できない。そんな時代でした。

 

歴史教科書にしても教科書会社は日教組に迎合するかのように、教科書記述を“左旋回”させていきます。マルクスレーニン主義にかぶれたかのように階級闘争的な歴史記述が散りばめられていきました。教科書検定の担当は教科書課でしたが、日教組が学校教育にもたらした様々な悪影響などには地方課が対処していたのです。

 

地方課に勤務した時間のうち、私にとって特に印象的だったのは地方課長としての日々でした。地方課長という立場になると、自民党内で開催される各種会合に頻繁に顔を出し、私たちの施策に理解を得るため説明に明け暮れます。当時は、そうした会合のなかに労働問題調査会と呼ばれる会議がありました。ここで地方課長は自民党の文教関係の議員から日教組問題について説明を迫られ、追及を受け、毎回のように叱責を浴びます。

「文部省の日教組対策はなっていないのではないか?」

「なぜ、教師のストライキを止められないのか?処分をもっと厳しくしなければダメじゃないか」

「今の教科書は何なんだ!日教組の主張ばかりが書かれてあるじゃないか!」

 

追及の矛先は決まって地方課長と教科書課長に向けられます。

「一体、どうなっているのだ!」

 

議員の皆さんは実に熱心に、学校教育の実情を憂いてくださいます。ただ、それが叱責を浴びる私にとっては「針のむしろ」のような時間であることはいうまでもありません。教科書が話題になると、私への追及はいったん止んで、代わって隣の教科書課長が“炎上”します。私はそれを「可哀そうだなあ」といたたまれない思いで見守るのですが、実際、当時の教科書記述はひどかった。自虐的な問題記述があふれ、「こういう教科書をなんとかしなければいけない」、そう切歯扼腕しながら過ごすわけです。

その思い出は知事になってからも私の根底に刻まれています。知事になって教科書採択にも一際強い思いを込めて臨んだのも、そうした日々があったからこそだったように思えるのです。

 

続きは、月刊「正論」4月号をぜひお読みください。

 

 

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