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寄稿   PCR検査めぐるフェイクニュース(前半)政策シンクタンク 原英史代表

発売中の月刊「正論」6月号では新型コロナウイルスをめぐるフェイクニュースについて、政策シンクタンク、原英史代表が「インフォデミック(情報の大量拡散)はこうして生じた」と題し、被害の事例を紹介しています。「週刊正論」では6月号の続編となる原氏の寄稿を2回に分け掲載します。
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「正論」6月号では「インフォデミック」を取り上げた。社会不安はフェイクニュースの培養器だ。トイレットペーパーデマをはじめ、コロナ関連では数多のフェイクニュースが飛び交う。中でも、PCR検査を巡るフェイクニュースがオーバーシュート状態だ。6月号で「PCR検査が少ないのは官邸の陰謀」などを取り上げたが、その後、状況はさらに悪化し、日々ますます増殖を続けている。

■「日本の検査数は異常に少ない」?
PCR検査に関して、根っこにある最大のフェイクニュースは「日本の検査数は異常に少ない」だ。新聞やテレビの情報番組などで繰り返し報じられ、半ば常識と化しているので、たちが悪い。5月13日公開の「CHANNEL SEIRON(チャンネル正論)」でもお話したが、ポイントを繰り返しておこう。
https://www.youtube.com/watch?v=Nrqum9IPcS4

まず、多くの欧米諸国の検査数は、日本より桁一つ多い。これはそのとおりだ。人口千人あたり検査数でみれば、スペイン:34.8、ドイツ:32.9、イタリア:27.2、アメリカ:26.3に対し、日本:1.7。だが、これは、感染拡大の規模が桁違いだから、当たり前のことだ。これらの国々では、人口あたり感染者数は日本の約20~50倍にのぼる。
そういうと、「日本は検査が少ないから見つかっていないだけだ」という人がいるが、それなら人口あたり死亡者数をみれば約20~100倍だ。専制国家はともかく、死亡者
数はおおむね正確なはずだ。

また、陽性率(感染者数/検査数)をみると日本は7.5%に対し、スペイン・イタリア・アメリカは約13-15%と倍近い。その意味はこれら国々では日本と比べ、より当たる確率の高い集団を対象に検査している、つまり、実質的には日本より検査が少ないということだ。ドイツは6.2%で日本より若干低いが、それでも同水準。日本よりずっと大きく網を広げて検査しているわけではない。

こうしてデータをきちんとみれば、「欧米諸国は検査を万全にやっていてすごい」と賞賛するような話ではない。「日本の検査数が異常に少ない」こともない。
(注:データは5月11日時点、情報検証研究所レポートより
https://johokensho.hatenablog.com/entry/2020/05/12/103037
「検査数」フェイクニュースが深刻なのは、社会に実害をもたらしていることだ。メディアなどでは検査数の国際比較を根拠に、「希望者全員にPCR検査を受けさせるべき」「国民全員にPCR検査を」といった極論が跋扈している。これを見た人たちは、保健所や医療機関に駆け込み、「心配なので検査してほしい」などと強く求めることになる。ただでさえギリギリの状態の現場に、更なる過剰な負担を強いているのは罪深い。

■福山哲郎参院議員発フェイクニュース
国会でも大間違いが垂れ流されている。一例が、福山哲郎参院議員(立憲民主党)の5月11日参院予算委員会での質疑だ。「日本には隠れた感染者がどれだけいるのか」と専門家会議の尾身茂・副座長を厳しく追及。答弁を再三遮った挙句に「答えてもらえない」と切り捨てる姿勢に批判が噴出。ツイッター上で「#福山哲郎議員に抗議します」ハッシュタグが拡散される事態になり、13日には福山議員が「本意でなかった」と言葉遣いにつき謝罪した。だが、言葉遣い以上に問題なのは、発言内容だ。福山氏は質問の中でこう発言している。

「世界中はこの無症状・軽症の方まで含めて検査を入れて感染者を出しているんです。それで実態を把握する中で解除の条件とか経済の回復などについて議論しているんです」
「日本の場合、(実際の感染者が検査で判明している人の10倍いるなら)10万人、日本中にいて、その人たちが感染を広げているんじゃないんですか」

「世界中は無症状・軽症の方まで含めて検査(して)実態を把握」は、事実ではない。どこの国でも、これまで感染者の全数把握など行っていない。これは、先に触れ
た陽性率のデータからも明らかだ。陽性率が日本よりずっと高い欧米諸国の多くでは、日本以上の規模で、隠れた感染者が存在するはずだ。また、日本を含む多くの国々で、PCR検査とは別途、感染規模を把握するための抗体検査が実施されつつある。例えばニューヨーク州の検査結果は陽性率12.3%、大阪市・神戸市はそれぞれ1%、3%。いずれにしても、把握されていた感染者の規模をはるかに上回る。

福山議員は、検査数だけをみて、無邪気に「諸外国はすごい。日本はダメだ」と誤解しているのかもしれない。しかし、それでも、国会議員の発言はマスコミで報じられる。「国会で指摘されているのだから、そうなのだろう」と、多くの人の誤解をより確固たるものにしていく。国会議員発のフェイクニュースは罪深い。

メルマガ「週刊正論」より転載。「週刊正論」の申し込みは下記のサイトからお願いします。

https://id.sankei.jp/mm/seiron.html

 

 

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