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島田洋一の「世界 high & low」

検察騒動に見る『三権分立』無理解

検察人事をめぐる国会の混乱は、多くの議員が民主主義と三権分立という基本的な政治理念を充分どころか全く理解していない実態を露呈した。刑事訴訟法第247条に「公訴は検察官がこれを行う」とある。すなわち検察官による公訴権独占である。

日本共産党の志位和夫委員長は、「そもそも検察官は、人を罪に問える――逮捕し、起訴するという強い権力があたえられた唯一の職であり、一般の公務員とはまったく違う」と力説する(しんぶん赤旗5月13日)。その通り、総理大臣ですら起訴し、政治生命を絶ちうる強大な権限を持つ。であるならば、その権力の「民主的統制」が、自由で開かれた体制を維持するうえで重要課題となる。

民主的統制の基本的かつ最も分かりやすい形は国民による選挙である。しかし日本の検察官は選挙の洗礼は一切受けない。野党は「検察の政治からの独立」を物神崇拝するごとき主張を展開するが、選挙と無縁の集団にアンタッチャブルな権力を与えるのは民主的統制の放棄に他ならない。「検察ファッショ」に道を開く危険な論理と言える。

検察官を選挙で選ぶことができないとすれば、選挙で選ばれた国会議員、その議員たちの多数で選ばれた内閣総理大臣が、検察に対する民主的統制の役割を国民に代わって果たさねばならない。

例えばアメリカでは、日本の検事総長に当たる司法省ナンバー3の訟務長官(Solicitor General)を初め全米各地の控訴裁や地裁に配属される連邦検察官(総計93人)は、すべて大統領によって指名され、上院が承認する制度となっている。任期は4年だが、その間、大統領の意思でいつでも更迭できる。もっとも連邦裁判官や各省庁の幹部は、大統領による指名後、上院が承認するまで就任できないが、検察官の場合は、大統領の指名直後から、司法長官の暫定任命という形で職務に就ける(ただしその後上院が否決すれば、その時点で辞めねばならない)。

すなわち、議会が検察官の人事決定権を持つものの、大統領の意思が、裁判官や政権幹部の場合以上に強く反映されるわけである。時に特別法に拠る形で、大統領の不正疑惑を専門に捜査する「独立検察官」が設けられることがあるが、これは司法長官による任命で、議会の人事承認手続きがなく大統領も直接には罷免できない。それゆえ三権分立の原則に反し憲法違反との批判も根強い。

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