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潮匤人の「時評書評〝新潮〟流」

さらば「ステイホーム」

ようやく緊急事態宣言が解除された。コロナ騒動とは何だったのか。関連書籍を紐解き、考えてみよう。この間私達は「外出自粛」という名の〝”刑罰”を受けてきた。コロナ騒動を受け大増刷され、100万部を突破したカミュの古典的名著『ペスト』(新潮文庫)は、都知事らが「ステイホーム」と呼んだ措置を「自宅への流刑であった」と描く。その他いま読むと、コロナ騒動を想起させる記述に暇がない。

「この病を終息させるためには、もしそれが自然に終息しないとしたら、はっきり法律によって規定された重大な予防措置を適応しなければならぬ」、「お役所なんて当てにはなりませんよ。てんで、人の話を理解できるような連中じゃないんだから」

以下の記述もペストをコロナと読み替えたい。

あの連中がよくいってますよねーーペストが終わったらこうしよう、ペストが終わったらああしようなんて……。彼らは自分でわざわざ生活を暗くしているんですよ」、「過去の生活は一挙に回復されはしないだろうし、破壊するのは再建するよりも容易である」

カミュは本作の最後に「人間のなかには軽蔑すべきものよりも賛美すべきもののほうが多くある」と書いた。我々はそうした思いを抱くことができるのであろうか。

新刊『人類と病 国際政治から見る感染症と健康格差』(詫摩佳代著・中公新書)は、サブタイトルにあるとおり、国際政治の観点から書かれた。なかでこう述べる。「感染症との闘いは、治療法やワクチンの開発など、医学の発展に大きく助けられてきたが、同時に国際政治の影響も受けてきた」。多数の近刊類書とは一線を画し、軍事・安全保障への影響にも着目する。「万が一、感染症が流行すれば、戦況にも大きな影響を与えうる。第一次世界大戦では、スペイン風邪、マラリア、チフスなどの感染症が交戦国の多くで流行した」。

最近の状況を踏まえ、こうも述べる。「新型コロナウイルスをめぐっては特に、その安全保障への影響の大きさが目を引く。韓国では韓国軍や在韓米軍の兵士たちに感染が確認され、春に予定されていた米韓合同軍事演習が延期されることになった。(中略)感染症の蔓延は軍事的攻撃に勝るとも劣らない影響をもたらしうることを、改めて認識させられる」、「感染症が各国の安全保障に影響を与えうるということは、感染症に対して、政治指導者による、政治的な関与が増えることを意味する。つまり感染症対策に国際政治が反映されるようになる」

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